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先物取引とは

先物取引さきものとりひき)とはいわゆるデリバティブ(派生商品)の一つで、価格や数値が変動する各種商品・指数について、未来の売買についてある価格での取引を保証するものを言う。元々は商品の受け渡しを伴ったものであったが、現在では、商品を扱うもの(先渡し契約あり:主に商品先物)と権利を扱うもの(派生市場商品取引・デリバティブ取引)に分化している。ここでは主に後者を記載する。

今の先物取引は、売買の当事者が任意に期日を決め現物を受け渡すことを約する契約(先渡し契約)とは異なり、市場が期日(取引最終日・納会日)を決め、期日までに反対売買により差金決済することが主流ある。(指定倉庫での現物の受渡し決算を認める取引所・銘柄も存在する:後述)対義語は現物取引・実物取引。

概要

本来は、価格変動の影響を避けるための手段(リスクヘッジ)として利用されるが、価格変動を利用して利益を得るスペキュレーション(投機)取引というものがあり、以下のような場合に、その差額を利益として得ることが出来る。

  • 今後の価格の上昇を予想して商品を購入し、実際に商品価格相場が上昇して売却した場合。
  • 今後の価格の下落を予想して商品を売却し、実際に商品価格相場が下落して買い戻しを行った場合。

現物を持ち寄らずに、紙上や電子的に取引を行うため、市場(いちば)よりも大規模な取引を行なうことが可能で、商品を取引する上での世界的な価格指標となる。

元々は商品の受け渡しを伴ったものであったが、現在では、商品を扱うもの(先渡し契約)と権利を扱うもの(先物取引)に分化している。

実物取引と清算取引

株式市場には、かつて長期清算取引があったが、この取引は個別株式の3ヶ月以内の3連続限月制の先物取引であった。現行の先物取引は、第二次世界大 戦後のアメリカの制度を見習い、「実物取引」と「清算取引」の区分を踏襲しながら、長期清算取引については Futures を訳して「先物取引」と呼んでいる。

「実物取引」と「長期清算取引」の中間位置に存在したものとして、期日到来後も30日以内に限って受渡し又は差金決済を繰り延べることが可能な「短 期清算取引」がある。日歩(又は逆日歩)とスワップ金利、取引所取引と相対取引、などの違いはあるが、類似の繰り延べ取引(ロールオーバー制度)として「外国為替証拠金取引」が存在する。

証拠金取引

先物取引の一般的な特徴として「証拠金取引」制度がある。これは、購入もしくは売却する先物の表示する原資産価額(単価×数量)の全額は不要で、市 場が指定する一定量額の証拠金を担保にして取引が出来るというものである。先物取引市場は実物市場の価格変動を回避するための保険(リスク・ヘッジ)とし て設計されており、証拠金は実物(原資産)の価格変動に見合う保険金・担保金の性格を持つ。反対売買のさいには差し入れた証拠金の差額調整により決済(差 金決済)され、取引所が設計した価格変動幅(値幅)を越える価格変動が生じた場合、証拠金は清算機関に差し押さえられ強制決済か追加保証金の納入を求めら れる。

先物取引を専門におこなう場合、証拠金システムによりレバレッジ(てこ)効果が生じ、株式の信用取引な どと同じように、用意する現金に比べて大きな利益、大きな損失が生じやすく、投資額からみるとハイリスク・ハイリターンな取引であるといえる。先物取引に 関して、想像以上の損失をこうむってしまう投機家が多いのは、このためである。取引所の取決めによっては投資額以上の負債を抱えることもある。

取引方法

前提条件

  • 現物市場価格と先物市場価格は常に同一とする。(実際は期日に向けて収斂していく。)
  • 金利は考慮しないとする。
  • 手数料は考慮しないとする。
  • 先渡し契約を含む場合も考慮する。
  • 証拠金は売り手買い手双方から預かる。(証拠金金額は価格変動リスクの大小により違う。通常は総代金の4% - 10%程度)。証拠金の適正・妥当価額の決定理論についてはブラック-ショールズ方程式など数理ファイナンス理論が利用される。SPANパラメーター。
  • 期日は売り買い共に同日とする。(実際には期日の違うものもありえる。)
  • 売買は多くても各1回ずつとする。(実際には取引が行われていれば何回でも売買できる。)
  • 売買数は100万ブッシェル。(実際には売買数の増減が可能である。)

リスクヘッジ(条件 その1)

  • 例えば、大規模な牧場があったとする。
  1. 牧場では牛の飼料にトウモロコシを使っている。
  2. トウモロコシは市場価格で購入している。
  3. トウモロコシが1ブッシェルあたり3ドル以上になると赤字になる。
  4. 年間に100万ブッシェル使用する。

酪農家は、来年のトウモロコシの価格が気になる。もし、来年の価格が3ドルを超えれば、赤字になってしまう。現状のトウモロコシ先物市場ではトウモ ロコシが2.5ドルである。そこで、酪農家は先物市場でトウモロコシを250万ドルで「100万ブッシェル買う権利」を買う。受け取るのは「来年決済時点 のトウモロコシ100万ブッシェルを買う権利」である。

一年後、現物市場のトウモロコシ価格が期日前4ドルになってそのまま期日を迎えた場合での決算
  • 酪農家は、先物市場で受け取った「トウモロコシを買う権利」とは別に、期日前に「トウモロコシ100万ブッシェルを売却する権利」も買う。このこ とで決算時に400万ドルの収入と250万ドルの支出がある。差額150万ドルが証拠金とともに支払われる。差し引き150万ドルの利益である。一方、実 際に飼料とするため現物市場でトウモロコシを購入する。単価4ドルで100万ブッシェル買うため400万ドルの支払である。先ほど、先物市場で得た150 万ドルの利益と相殺して、差し引き250万ドルの支払となる。これで事実上、単価を2.5ドルに抑制できたことになる。酪農家が先物取引をしていなければ 赤字となっていた。
一年後、現物市場のトウモロコシ価格が期日前1.5ドルになってそのまま期日を迎えた場合での決算
  • 酪農家は、先物市場で受け取った「トウモロコシを買う権利」とは別に、期日前に「トウモロコシ100万ブッシェルを売却する権利」も買う。このこ とで決済時に150万ドルの収入と250万ドルの支出がある。差額100万ドルが証拠金から差し引かれ、証拠金で足りない分は追加で支払う(証拠金には価 格変動による追加あり)。差し引き100万ドルの損失である。一方、実際に飼料とするため現物市場でトウモロコシを購入する。単価1.5ドルで100万 ブッシェル買うため150万ドルの支払である。先ほど、先物市場で失った100万ドルと合算して、250万ドルの支払となる。これで事実上、単価が2.5 ドルになる。酪農家が先物取引をしていなければ、より利益があったが、赤字にはならなかった。
  • 酪農家は、先物市場で買ったトウモロコシが手元に残る。決済時に250万ドルの支出がある。これで単価が2.5ドルになる。酪農家が先物取引をしていなければより利益があったが、赤字にはならなかった。(先渡し契約を伴う先物取引:現物の受け渡しは指定倉庫など)

リスクヘッジ(条件 その2)

  • 例えば、大規模な農場があったとする。
  1. 農場ではトウモロコシを生産している。
  2. トウモロコシは市場価格で売却している。
  3. トウモロコシが1ブッシェルあたり2ドル以下になると赤字になる。
  4. 年間に100万ブッシェル生産する。

農場経営者は、来年のトウモロコシの価格が気になる。もし、来年の価格が2ドルを下回れば、赤字になってしまう。現状のトウモロコシ先物市場ではト ウモロコシが2.5ドルである。そこで、農場経営者は先物市場でトウモロコシを「100万ブッシェル売る権利」を買う。受け取るのは「来年決済時点のトウ モロコシ100万ブッシェルを売る権利」である。

一年後、現物市場のトウモロコシ価格が期日前4ドルになってそのまま期日を迎えた場合の決算
  • 農場経営者は、先物市場で受け取った「トウモロコシを売る権利」とは別に、期日前に「トウモロコシ100万ブッシェルを買う権利」も買う。このこ とで決算時に250万ドルの収入と400万ドルの支出となる。差額150万ドルが証拠金から差し引かれ、証拠金で足りない分は追加で支払う(証拠金には価 格変動による追加あり)。差し引き150万ドルの損失である。一方、実際に生産したトウモロコシを現物市場で売却する。単価4ドルで100万ブッシェル売 るため400万ドルの受取である。先ほど、先物市場で失った150万ドルの損失と相殺して、差し引き250万ドルの収入となる。これで事実上、単価が 2.5ドルになったことになる。農場経営者が先物取引をしていなければより利益があったが、赤字にはならなかった。
  • 農場経営者は先物市場で売るためトウモロコシを指定倉庫に運搬する。決済時に250万ドルの収入となる。これで単価が2.5ドルになる。農場経営 者が先物取引をしていなければより利益があったが、赤字にはならなかった。(先渡し契約を伴う先物取引:現物の受け渡しは指定倉庫など)
一年後、現物市場のトウモロコシ価格が期日前1.5ドルになってそのまま期日を迎えた場合の決算
  • 農場経営者は、先物市場で受け取った「トウモロコシを売る権利」とは別に、期日前に「トウモロコシ100万ブッシェルを買う権利」も買う。このこ とで決算時に250万ドルの収入と150万ドルの支出となる。差額の100万ドルが証拠金とともに支払われる。差し引き100万ドルの利益である。一方、 実際に生産したトウモロコシを現物市場で売却する。単価1.5ドルで100万ブッシェル売るため150万ドルの収入である。先ほど、先物市場で得た100 万ドルと合算して、250万ドルの収入となる。これで事実上、単価が2.5ドルになる。農場経営者が先物取引をしていなければ赤字になっていた。

このようにリスクヘッジ目的に先物取引をすることは、より高い利益を求めるためではなく、経営構造を安定化させるために行なう。一年後、価格がどうなるか分からない状況では計画が立たないが、先物取引を行なうことで見通しを立てることができるようになる。

米先物取引の一例

先物取引の仕組みと機能、9ページ目

投機

投機を 行う者にとっては、前述のリスクヘッジ目的の取引の場合と異なりその商品自体が重要なわけではない。取引参加者は、商品価格を左右するような情報を手に入 れるなどして将来の価格を予測し、先物取引によって利益を得ようとする。取引手法はリスクヘッジ取引と同じで、先物の購入または売却を行い、期限前に反対 売買をすることで差金決済する。

また実需を行う買い手にとってはリスク軽減の効果もある。買い手が指定倉庫に近ければコスト運搬コストも下げる事が出来る。

投機が存在することにより、先物市場の取引規模は増大し流動性が高まる。また、結果的には、大小様々な情報を価格へ織り込む役目を行なっていることになる。これにより、先物市場の有用性が高まるが、一方でレバレッジを活用した巨額の取引により、意図的に価格を吊り上げたり、逆に売り崩したりする場合があり、市場の混乱の一因ともなる。

種類

日本の公設先物取引には以下の種類がある。

  • 商品先物取引(商品取引)
  • 金融先物取引
  • 国債先物取引
  • 株価指数先物取引(日経平均先物など)
    特に日経225先物取引
  • 長期清算取引(1945年8月まで取引されていた国内個別株式の先物取引)

また、証拠金取引として取引システムが類似したものとして外国為替証拠金取引(FX)が存在するが、FXは直物為替先渡取引(先渡し契約:forward)であり先物取引(futures)ではない。外国為替先物の国内取引所はなく、国際的にはシカゴ・マーカンタイル取引所の為替先物が利用される。



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